絵の見方, 美術館 ギャラリー

『色彩画家』という視点で見る初心者のためのマティスの楽しみ方 

2023年『マティス 展』始まりました

上野の東京都美術館でマティス 展(2023年4/27〜)が始まったようですね。
もう行かれましたか?
前回は20年前の開催。久しぶりにマティス作品に再会できるのがとても楽しみです。
マティス は多くの人たちに影響を与えた20世紀の偉大な作家。
まとめて見るチャンスはなかなかありません。
ガッツリ楽しみたいと思います。

マティス 展を楽しむために

知識なしでも美術は楽しめるし、実際そのように美術と接している人は多いと思います。
マティス の作品は比較的親しみやすい作品が多いので、予備知識がなくても楽しめます。
でもほんの少し予備知識があるだけで作品鑑賞がより深くなるのではないかと思います。
難しくはないしチョットの準備で「1粒で2度美味しい」が楽しめます。

マティス はヘタクソ?

ところでマティス の作品って子供が描いた絵のようにも見えませんか?
洒落ているのはわかる気がするけど、単なるブルジョア趣味じゃないの?
ただの塗り絵じゃないか。どこがそんなにいいのかな?
学生の頃はそんな感じで見ていました。
同じ感想をお持ちの方も多いんじゃないのかな?

マティス作品鑑賞のポイントは『色彩』

今回の展覧会、英語タイトルの副題は「the path to color(色彩への道)」だそうです!
マティス といえば線画の作品他も色々ありますが
まずは『色彩画家』という視点で見るのがおすすめです。
何にも知らない人はこのポイントだけ意識してみてね。簡単でしょ!

マティス作品では、たくさんの色同士が響き合うように画面が構成されています。
色彩は物を説明する道具ではないし、見たまま描くことが絵画ではありませんと言うのです。
中にはかなり形が単純化されたものもあるので
マティス の作品は子供の絵のように見えたりすることがあります。

マティス の生涯を大雑把に、なぞるとするならば
『色彩の関係』を探究する旅だったのではないかとも思えます。

色彩表現に至るまでの道

なかなか一人の作家を年代順に見ることなどあまりしません。
マティス の場合は特にだと思うのですが、
試行錯誤し、変化していく様子が見えてくると、年代順に追いかけることが面白くなります。
これから大まかにですがマティスの作風の変化を年代順に追いかけてみようと思います。

   ー 法律家からの転向 ー

1869年生まれのマティス は若い頃、法律家を志すも入院中に絵の具箱を渡さたのがきっかけで絵を描くことに目覚めました。

1895年『読書する女性』
まだ写実的な絵でした.

  ー 色彩に目覚める 点描技法を試す ー

1897年 印象派画家のジョンピーターラッセルに印象派やゴッホなどを教えてもらい色彩に目覚めました。
マティス は影響を受けた画家達の作品を借金してまで買い集めたそうです。
ゴッホの他にゴーギャン、セザンヌ、シニャックなどに影響をうけ自由な色彩による絵画表現を追求しました。 

1904年『豪奢、静寂、逸楽』
シニャックの影響で点描技法で描きました。 

  ー フォービズムの頃 ー 

1905年 仲間とサロンに出品したところ不評でした。 
強烈な色彩と激しい筆使いから野獣の折の中にいるようだと酷評されフォービズムと呼ばれました。

酷評されたフォービズムの作品
『コリウールの開いた窓』1905年

現実の色をそのまま描くのではなく
自由な色彩による表現の始まりです。

酷評されたフォービズムの作品
『帽子の女』1905年

他に有名な『緑の筋のあるマティス夫人の肖像』もこの頃。

調和の取れた心地いい色の組み合わせではないので
不快な表現ととる人もいると思います。
でも、色彩による表現を試し始めた頃とういうことが分かっていれば、あー!色々と実験していたんだな!
と納得できます。

フォービズムは3年程度で下火になりフォーブの作家達はそれぞれの道へ進みました。


1908年「赤い部屋」赤のハーモニー伝統的な遠近法は無視。
    平面での色彩表現の可能性を探っているのがわかる気がする。

  ー フォービズム以降  ー 

1908「赤い部屋」赤のハーモニー
伝統的な遠近法は無視。
平面での色彩表現の可能性を探っているのがわかりますね。

1909年『ダンス1』

色彩を抑えた作品。
余計なものを極力削ぎ落とした力強さを感じます。

『ダンス2』

1912年『金魚』 
金魚の赤は画面の中で映え、難しい黒の使い方が上手いですね。
マティス は黒を使うのが本当に上手い!

  ー 抽象的な表現を試す ー 

1914年 「コリウールのフランス窓」
第1次大戦のころの作品。
絵画を単純化すると抽象的になっていきます。
この頃マティス は抽象的な作品を発表していますが、結果的に抽象には進みませんでした。
マークロスコっぽい感じがいますがどうでしょう?

  ー 第1次大戦後 ー 

1924年〜25年頃
『赤いキュロットのオダリスク』

マティス は旅行家だったそうです。
モロッコ旅行の後にオダリスクやオリエンタルな装飾の興味を持ち、このテーマで作品を製作ました。

70代になって大病を患った後からベッドでの製作が増えました。
1947年〜48年 
健康上の理由によりこの頃が最後の油絵作品となる。
 



1947年『赤い室内、青いテーブルの上の静物』
大胆な画面構成。黒のジグザグが効いてます

同時期の作品 
「大きな赤い室内」1984年
今回見れるようです

『エジプトのカーテンのある風景』1948年
なんかも上手いなー。
洒落てます。黒っぽい全体であるのに光を感じる作品

  ー 切り絵 ー 

絵の具で彩色した紙をハサミで切り取り貼り付けた作品。
ベッドで寝ながらの作業が増えてからの作品なのですが制限を感じさせないですね。

『ブルーヌード』1952年

『ジャズ』1945年〜1947年

『王の悲しみ』1952年

マティス について何にも知らない人にために、鑑賞のポイントということで駆け足で紹介してみまた。
このぐらい知っていれば、さっぱりわからない・・と言うことにはならないでしょう。

マティス の作品は自分が歳を重ねるのと並行してその時々で発見があります。
長く楽しめる楽しめる作家なので今回の展示を機会にマティス を好きな人が増えるといいなと思います。
マティス 展で好きな作品が見つかったり、新たな発見があるといいですね。

内容的に重なりますが以前にもマティス について書いてます。
参考までに・・

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