◇激しい色と荒々しいタッチ
マティスの有名な「緑の筋のあるマティス夫人」という作品です。
とても激しい色使いと荒々しい筆使いでかかれています。
僕はこの作品が得意ではないのですが、みなさんはどうでしょう?
マティスはとても好きな作家ですがすべてが好きだというわけではありません。
知り合いにはモジリアニが苦手という方もいます。
好き嫌いって誰でもあると思います。
人それぞれですね。
でも名画と言われているからには理由があるのでしょう。
どうしてこの絵がいいのかな?!もっと知りたい気がします。
「緑の筋のあるマティス夫人」が発表された当時の評判はというと・・
やはり拒絶されたようです。
このような当時の激しい絵を「フォービズム(野獣派)」と呼びます。
これは批判的意味で名づけられたようです。
◇この絵はどこがいいのかな?2つのポイントで考えてみる
この作品を2つのポイントから見てみます。
①年齢とともに作風がどんなふうに変化していくのか見てみる。
マティス初期の作品は写実的だったようですがゴッホなどの影響をうけて色彩の可能性を追求するようになったようです。
この絵はとても貫禄があるのですがマティスが30代半ば頃1905年に描かれました。
ということは、まだまだこれからという年齢です。
僕が好きなマティスの作品たちよりも、もっと早い時代の作品です。
普段、作品を見るときは年代をあまり意識せず横並びで見てしまいがちですが、
長い作家人生の中で作風が変化するのは当たり前です。
一枚の絵はその成長過程の一場面にすぎないのですからね。
気になる作家はやはり年代順を追ってなぞることも必要かと思います。
「20代の頃はこんな作風で10年後にあんな風に変化していくのだな」
と知ることで納得しやすくなります。
マティスはこのあと数年でもっと落ち着いた作品を描くようになります。
マティスの作品を見る時はどれも彼の作品だと分かるけど実は時代と共にかなり変化しています。
このことは知っていたほうがいいかもしれません。
でもその前に感想や好奇心を持って観ることがたいせつですね。
②歴史的に意味ある作品だったことを知る。
この作品はフォービズム時代の作品です。
フォービズムは野獣派とも言われています。
野獣派という名の通りでチューブから出したままのような大胆で激しい色使いで表現してます。
そうすることで色彩に自由を与え
絵画を伝統的な様式から解放したのです。
絵画の歴史をひっくりかえした代表的な1枚だったので
歴史的に評価されているのです。
マティスもいろいろな表現を変えて試行錯誤していたのですね。
今回は
①年齢とともに作風がどんなふうに変化していくのか見てみる。
②歴史的に意味ある作品だったことを知る。
という2つの視点で作品について考えてみることで納得できたかと思います。
写実的であったり調和のとれた目に優しい絵もありますが、
それらは時に保守的に思えることもあます。
古い価値観を新しい価値観に変える激しい力を持っていることで評価され歴史に残ったものもあります。
心地よさを美術に求めることもいいですが
自分の好みから外れた作品も知ってみることで世界が広がるかと思います。
◇少しは知識があってもいいかも・・
僕は感性を優先したい方なので
予備知識なしで楽しめるのが良いのですけど
最低限の知識ならば見ることを助けてくれるので、あっても良いと思います。
分からない時は入門書とかで補うのも良いかもしれません。
それぞれの時代の作家たちが何をしようとしていたのか、
なぜ評価されているのか分かるからです。
見通しが良くなります。
◇楽しむことが大切
でも、あくまでも楽しむことが前提です。
知識集めよりも、始めはたくさんの作品と出会うことのほうが豊かだと思います。
興味あるな。知りたいな。と思ったときに調べてみればよいかと思います
人は知識を集めたがりますが焦らずゆっくりと楽しめばいいと思います。
名画だからと言ってこの作品はすばらしいのだと
自分に言い聞かせなくてもいいと思います。
調べて分かることもあれば
徐々に良くなっていくこともあります。
時間がたてば好みや感覚の幅が広がってきます。
堅苦しくならずに気長に楽しみましょう。