◇モランディの絵はケーキ色みたい
猫の後ろの壁に絵がかけてあります
この絵はモランディという人の描いた絵です。
モランディの作品はほとんどが静物画です。
静かで瞑想的な世界です。
ずーっと観ていたくなる魅力があります。
美術好きとしてはその世界観を探ってみたい心境にさせる作家です。
そっけなくも見えるので
興味のない人には退屈にみえるかもしれませんね。
僕なんかはバニラにカフェオレ、チョコレートなんかのケーキや
アイスクリーム、焼き菓子の詰め合わせの色に見えてしまいます。
そんな風に解釈するのも楽しいです。
ところでモランディの作品はよく見ると
ただの卓上の風景でないことが分かってきます。
◇同じような絵が多いけど?
モランディの作品は「同じような絵ばかり」なのですが
描いていて飽きなかったのでしょうか?
どんなことを考えながら描いていたのか?
なぜ連作のような作品ばかりなのか想像してみたいと思います。
画家の頭の中を垣間見ることができるかもしれません。
◇狭い範囲の中に見えるたくさんのグラデーション
モランディ作品をみてみると
どれも似た感じです。
そっと差し替えても分からないような
小さな違いしか分からない作品もあります。
でもモランディにとってその小さな違いは
大きい違いだったのかもしれません。
というのも画家本人は制作中はとても集中していて
感覚が研ぎ澄まされているのです。
そういう時は細かいところまで、よく見えるものです。
ちょっとした違いに敏感になります。
狭い範囲の中にもたくさんのグラデーションが見えるのだと思います。
それらの違いを試してみないと気が済まないが作家というもの。
次々とアイデアを試してみたくなるので
同じような絵が連作のように生まれていったのかな?と想像できます。
狭い中で微細な変化を、しつこく攻め続ける集中力と持久力。
そこがモランディワールドの魅力なんじゃないかな、と思います。
作家にしか見えていない微細なグラデーションが
それぞれの作品に違いとなって表れています。
モランディはそんな実験を生涯続けていたのだと思います。
◇具象画?それとも抽象画?
モランディの作品は
テーブルの上に瓶などが描かれた静物画が多いのですが、
描かれたモノ一つ一つはとても無表情で説明的な要素が省かれています。
ラベルもガラスらしい質感もありません。
白や薄い黒で塗りつぶされた瓶、背景に溶けてしまいそうなものもあります。
ここでは背景もモノも同じような扱いで描かれていて区別がないようです。
描かれているのは色と形だけで
それらがどんな風に関わりあって画面が出来ているのか?
という風に見えます。
なんだか抽象画のようにも見えてきます。
色と形のみでどんな表現ができるのかという実験みたいですね。
一つ一つはとても無表情。
なのに出来上がった全体を見ると魅力的に見えます。
人はモノに対して「これは瓶だ」とか「ガラスで作られている」とか
主観的な思い込みがあります。
それらを取り払うと色や形という純粋な要素だけに還元されます。
還元された要素だけで構成された世界を抽象と言います。
抽象は僕らの日常の思い込みを取り払うことで
もっと純粋な世界へ連れ出してくれるのです。
◇絵の中に抽象的美しさを探す楽しみ
モランディの作品は抽象画寸前の「具象抽象」ですが
具象画の中にも抽象的な美しさを持っている作品も多くあります。
具象とか抽象関係なく、たくさんの作品の中から自分の眼で
抽象的な美しさを探してみてください。
物事を抽象的に見たり、純粋に見る事で
僕らの目は日常的なモノの見方から自由になれるのです。
そんなところにも絵画の面白さがあるのです。
◇モランディの生涯を少しだけ・・
モランディは生涯を独身で3人の姉妹と共に暮らし
版画の先生をしながらイタリアのボローニャから
ほとんど出ることもせず一生を画家として暮らしたそうです。
画家としては成功しましたが
名声には興味なく制作に没頭する暮らしを選び
孤高の画家として知られているようです。